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 皆さん、こんにちは!

 別件に没頭しているうち、またもご無沙汰してしまいましたが、いか がお過ごしでしたでしょうか。初めての方、はじめまして。

 発行人・経営コンサルタントの太田です。

 さる8月15日は、当ニューズレター創刊5周年でした。その歩みは次 の通りで、ようやくアクセス数も累計約80万。昔の拙稿が今も輝いているか、 ぜひ皆さまにご審査いただきたいと思います。(^^)

 とくに昨今は、People Management、中でも eLearning に焦点。

また当件については、当ニューズレターだけでなく各所で講じてます。

 何故、ここまで eLearning を焦点にしてるのか。企業の成功には KM/CRM が必要であり、その KM/CRM の成功には、People Management が必要であり、その成功には eLearning が必要だからです。

 では eLearning が、企業の成功に「必要」というのが正しいとして、 それは「簡単」か? 当然ながら答はノーですね。



[ 1] eLearning の失敗率は「6割」。その4要因とは(2002年春調査)

 現に eLearning の失敗率は「6割」だそうです。

 この調査の前提は、次の通り。

  • 調査対象は欧州各国で、調査言語は英独仏伊西。

  • 回答者は 433件。その代表性(偏り)を見ると、
    • うち8割が EU 加盟国
    • 関連職種は幅広くカバー(教師と管理職、公共と民間など)
    • ただし調査媒体がネットだったので回答者の技術受容特性も やや「アーリー・アドプター」寄りで、これは長短両面あるかも

 そして、この調査の結果は、次の通り。★の通り、 eLearning の失敗率は6割です。この数字は、覚えてください。

  • eLearning の"Quality" への総合評価。
    • 成功: 39%(秀逸:1%、 非常に良い:5%、良い:33%)
    • 失敗: 61%(中位:46%、悪い:15%)★

  • この総合評価を出すに当たって回答者が重視した項目
    • (1) 技術的な信頼性
    • (2) 学習者の特性と教育学の原理を明確に反映した設計思想
    • (3) 教材コンテントが最先端であること
    • (4) 高度なインタラクティビティ
    以上(1)〜(4)は多い順。ただし、これら4項全てにつき、2/3 以上の回答者が「中位」または「悪い」と評価

 このうち要因(1)(3)は自明だし、(2)は下記で既述ですので・・・

本号では以下、要因(4)の「インタラクティビティ」を講じます。 ぜひ皆さんの『eLearning 要求仕様』に組み込んで、失敗要因を プロジェクト開始前に減らしてください。



[ 2] 重要なのはインタラクションだ。ストリーミングではない
 ということで重要なのはインタラクティビティ。これは

 いま世の中では「ストリーミング」が「流行」のようですが、娯楽の 世界ならともかく、教育の世界では、インタラクティビティが必要です。



[ 3] 重要なインタラクションは「討議と演習」だ。これで効果「3倍」

 では次の問題です。重要なインタラクションとは何か? 下記(5)(6) を見ると、答は「討議と演習」のようです。

  • 学習の 24 時間後に、どれだけ学習内容を覚えているか?
    • (1) hear it (lecture)   5% (聴いてるだけの「ラジオ講座」)
    • (2) read it       10% (読んでるだけの「読書」)
    • (3) watch it (movie)   20% (視聴してるだけの「受講」)★
      (今の eLearning の多くはこの段階?)
    • (4) write it       30% (ノートをとりながらの「聴講」)
    • (5) discuss it      50% (仲間どうし「討議」を行う)
    • (6) do it        75% (学んだことを「演習」で応用)
    • (7) teach it       90% (自分で教壇に立ち「講義」をする)

    出典: http://www.teachers.net/FAQ/schoolhouse/bruno5.html *

    注) これは、(e)Learning 文献で超頻出の定番数値。数字のキリがいいことから、 正規の調査結果ではなく、どっかの先生がエイヤで言って、 皆が支持してるだけかもしれませんが、それでも、 かなり多くの専門家が講演や資料で使ってますので、便宜上、 これを我々も使うことにしましょう。

 ぜひ日本の eLearning も、(3)から(5)(6)に引き上げましょう。そう すればば果も3倍。この数字も覚えてください。そして仲間との議論 で、ぜひ口にしてみてください。

 いま世の中は「エクスペリエンス」が「トレンド」のようですが、問 題は「どの」エクスペリエンスを重視するかということですね。娯楽の 世界なら、(1)(2)(3)で充分です。しかし学習の世界では(1)(2)(3)だけ でなく(5)(6)のような「討議と演習」も必要です。

 もちろん(1)(2)(3)だけで物事を習得できる人たちもいます。だけど、 そんな人は、イマジネーション豊かな天才で、 (5)(6)のような「討議と演習」が頭の中で勝手にできちゃう人なんでしょうね。

 そういう天才たちは、たとえばラジオ講座だけ聴いてて全国模試で トップ20に入ったり、入る大学も東大や慶応ではなくて芸大や桐朋だったり、 入学後も半年に1個のペースで外国語がマスターできたりして、 ほんとにすごい。だけど彼らは、偉大なる例外なのであり、一般には 参考になりません。ふつうの人には「討議と演習」が必要です。


[ 4] 設計仕様-1: 教材制御(要約、5W、具体例、公式文書等)

 ということでeLearningの世界で重要な「討議と演習」。これを設計 することを「ダイナミクス設計」と呼びましょう。そこでは 次の3つが大事だと思います。

  • -1: 教材制御 (要約、5W、具体例、公式文書、反復・移動)

  • -2:演習支援 (難易度、ヒント提示、論点審査、参考例送付、格付)

  • -3: 態度表明支援 (面白いぞ、よく分かったぞ)

 うち-1は、教材を使って1人で学んでるときに使う機能です。

  • 1a) 要約バルーン

    • 階層型の目次をさっとマウスでなぞると、その章・節の要約文が 吹き出しの中に出てくる。それを一読して 「既知」または「興味なし」なら、すぐ次へ。 逆に「お!」と思えば、その要約文を右クリックすることで、
      • 別ウィンドウ1に原文該当個所が出たり、
      • 別ウィンドウ2に動画や音声も出たりして、 五感をフル動員した理解に走れる

    • 各章・各節の要約文は、誰が作ってもいい。
      • 教材制作者が精魂込めて作ってもいいし、 現場の講師や、受講生に作ってもらってもいいし(教育効果高)、
      • ジャストシステムの「ConceptBase Summarizer」などの 自動要約ソフトで自動作成させてもいい
      • いずれにせよ作成者名を要約文の最後に入れたい。 これなら、作成者の名誉になるし、ソフトの作った要約文が 人工的で不自然でも「まー、こんなものだよな」と思って もらえる

  • 1b) 5W ボタン(Why ボタン、What ボタン、How ボタン、Who ボタン)

    • 世の中には、Why を学びたがる人、What を学びたがる人、 Howにこだわる人、そんなことよりコンテンツの制作者や登場人物の 人格や行動(Who)を知りたがる人、の4種類の人がいる。 各タイプの人たちが自分の知りたいことを真っ先に学べるよう、 この4ボタンを画面に配する

  • 1c) 具体例ボタン

    • 学んだ原理が、どんな事例で活きている(応用されている)か、 知りたくなったときに押すボタン。

    • 内部的には、その章・節のキーワードくらいは制作者が事前 指定するとしても(たとえば「工作機械」)、 ボタンを学習者が押したときには、それらのキーワードを、 ソフトウェアが当教材の使用語句に合わせて自動的に類義語展開した上で( 例えば「工作機械 or マシニング・センタ or MC or 自動プロ」)、 適切な情報源に探しにいってくれる。

      すなわち、具体例は、教材制作者が事前準備するのではなく( してもいいんですけど)、学習者が当ボタンを押した時点で、 システムがオン・ザ・フライで探しにいく。

    • その探しに行く先は、日経DBやロイターや仕入先や顧客など 社外情報源もあるでしょうし、大企業なら、それプラス社内の 情報源も含めるべき。

    • なお、この「オン・ザ・フライで類義語展開」できるソフトに ジャストシステムの「ConceptBase Search」があり、 情報源が新聞記事でよければ、次の2形態で使える。

  • 1d) 公式文書へのリンクボタン

    • 一般に公式文書は、法務のレビューを経ていますので、 教材と異なり、予想外の事故が起きぬよう、細かい制約条件が いっぱい書いてあって、一見すると分かりにくいし、つい 細部に目が行ってしまい、立法の趣旨も掴みにくいかも。

      しかしそんな分かりにくい公式文書も、中身を eLearning で 学んだ後なら、分かりやすくなってるかもしれませんし、 ちゃんと分かってしまえば、ほんとに頼りになるのは、 教材よりこっちの方かもしれませんね。

    • このボタンも内部的には、上記 1c) と同様に、 オン・ザ・フライ検索。これで制作工数が減らせると思います。 つまり該当する公式文書のURLを教材制作者がいちいちイントラ上で 調べて、そこへのリンクをいちいち事前に教材に埋め込むのではなく、 制作者は、その章・節のキーワードだけを事前にボタンに覚えさせればよく、 あとは学習者がこのボタンを押した時点で、ソフトウェアが、 それら事前指定キーワードを自動で類義語展開した上で、探しにいってくれる。

  • 1e) 反復ボタン、移動ボタン(単なる基本ですが)

    • 重要なところ、分からないところは、何度も聴きたいですし、 そうでないところは飛ばしたいですね。つまり「ザッピング」と 「巻き戻し・早送り」です。

[ 5] 設計テーマ-2:演習支援(難易度、ヒント、論点審査等)を

 ということで、eLearning におけるダイナミクス設計の主テーマは次の3つ。

  • -1: 教材制御 (要約、5W、具体例、公式文書、反復・移動)

  • -2:演習支援 (難易度、ヒント提示、論点審査、参考例送付、格付)

  • -3: 態度表明支援 (面白いぞ、よく分かったぞ)

 うち-2 は、文字通り、教材上で演習をしているときに使う機能です。

  • 2a) 難易度選択ボタン(初級演習、中級演習、上級演習)

    • 演習って[3]の通り効果は高いんですが、 人によっては度胸が要るかも。とくに慎重型の人たちは、 初級→中級→上級という正規のステップを踏みたいはず。 そんな慎重型の人々にも、そうでない人々にも喜ばれるよう、 この難易度選択ボタンがほしい。

    • なお演習問題は、上級になればなるほど、ますます多くの章、 多くの節で学んだ原理を複合的に活用しないと解けないよう、 設計するのが通例ですが、そうなると文書横断的なポインタを 埋め込みたいですね。

  • 2b) ヒント・ボタン (親切、不親切)

    • 親切ヒントボタンを押せば親切なヒント、不親切ボタンを 押せば不親切なヒントが出てくる。当然、後者を選んだ人の評価は 高くすべきです。

  • 2c) 論点カバレッジ審査(仮審査)

    • 演習問題は、なるべく選択式ではなく論文式にしたいですね。 でも、それを最初から生身の人間が添削するのは労力がかかる。

      そこで役立つのが、この「論点審査」。 答案論文がしかるべき論点をカバーしているか、をソフトウェアが 自動で審査し「この論点についての記述が抜けてませんか?」と 助言してくれるのです。

      そんな論点カバレッジ審査を自動代行してくれるソフトに、 ジャストシステムの「ConceptBase IV」 * があり、 その「トピックス抽出」機能が本件では有望のように思います。

       その使い方ですが、この機能を、外部の親プログラムから、 API 経由で呼び出せれば素晴らしいですね。

  • 2d) 参考回答送付

    • 自分の提出した答案論文と似たような論点構成の類似論文を 紹介してくれる機能。これで「仲間が作った既存ナレッジ の再利用」を促せる(あるいは半強制?できる)。

      それらの論文を参照したり引用したり加工したなら、正直に「 誰それの論文を参照した」「引用した」「うち一部加工した」 と明示させればいい。明示した上での参照・引用・加工には、 加点したいですね。既存ナレッジを発掘・活用するというのも、 大事な貢献です。

      ただし、こうなると、後から回答を提出する人が、仲間の意見を 反映できる分、良い回答が書けて、一方的にトクをしてしまう。 しかし同時に、参照・引用・加工に値する論文を書いた人の評価も、 その参照頻度・披引用頻度によって自動加算されるようにすればいい。

      さらに、その自動加算が、複数の引用世代をまたがって波及されれば、 もっと良い。回答を早期に出した人が雪だるま式にトクする。

      ここで類似論文の紹介を自動代行してくれるソフトに、上記「 ConceptBase IV」があり、 その「コンセプト・キー」機能が 本件では使えると思います。 *

      使い方は上記と同様でしょう。(たぶん)

  • 2e) 格付(本審査)

    • こうして仮審査と類似回答チェックを経たら、晴れて正式提出、 そして本審査ができる。論点カバレッジ(網羅性)の審査は、 すでに2c)で終わってるので、ここでの審査のポイントは 「論理性・実証性・新規性・分かりやすさ」になる。 なお「応用可能性」は出題者が問題を作った時点で決まりますので、 ここで評価する必要はありません。

    • この本審査は公開の場で、かつ講師だけでなく過去の回答者も 巻き込んで行う。アマゾンの書評と同じ。これは
      • 上記 2d)を悪用した「盗作」を、「公開」という手段で 防ぐため、かつ
      • 人の前で人を評価するという行為が過去の回答者にとって 良い訓練になるからでもある。

    • そのアマゾンがやってるような「公開型の格付&ランキング」を 支援してくれるソフトウェアにリアルコム社の「Ksquare」が あります。(その使用例はこちら) *

  • 2f) 盗作防止

    • 強盗が横行する野蛮国では、小売業を営むのは難しいですね。 ですから彼らが喜ぶ「闇」をなくすため、そこいらを明るく 照らす必要があります。

      企業内も同じこと。盗作されるリスクを極小化しないと、社員も 自分のナレッジを安心して提示できませんよね。

      すでに 2e)で少しは盗作防止になってはいますが、これだけでは不充分です。 なんたって日本は著作権に関して後進国であり、警察が著作権違反者を 逮捕しはじめたのは最近の話なんですから。 *

    • したがって正規に提出された回答論文は、上記「Ksquare」の ようなシステムで、全点公開するだけでなく、アップロードと 同時に、その論文をキーに、然るべきソフトが、過去の論文たちを 似ている順に再並べ替えするようにしたらどうでしょうか?  そうすれば上位数点を目視するだけで、 盗作があったか否かは一目瞭然です。

    • こうした「似た論文を似た順に再ソートする」機能は、 上記のジャストシステム社「ConceptBase IV」 *で得られるので、 K-Square から、API 経由、ConceptBase IV を呼び出す ことで欲しい機能は得られると思います。

[ 6] 設計仕様-3:態度表明支援(面白いぞボタン、分かったぞボタン)

 ということで、eLearning におけるダイナミクス設計の主テーマは次の3つ。

  • -1: 教材制御 (要約、5W、具体例、公式文書、反復・移動)

  • -2:演習支援 (難易度、ヒント提示、論点審査、参考例送付、格付)

  • -3: 態度表明支援 (面白いぞ、よく分かったぞ)

 うち-3 は、教材上でライブ講義を受けているときに使う機能ですが・・・

 本件については、 前号[2]で「反応ボタン」として論じました。 ただ呼称としては「態度表明」ボタンと呼ぶ方が学習者中心ですね。 すなわち、

    (1) 感情を表明するための「面白いぞボタン」

    • 拍手ボタン
    • 笑いボタン

    (2) 理解度を表明するための「分かったぞボタン」

    • なるほどボタン、
    • そうかもしれんボタン、
    • うーんボタン、
    • え?ボタン


[X] 結論: この3機能を『eLearning 要求仕様書』に注入しよう

。。。ということで以上、

eLearningの失敗率(6割)を減らすには、 インタラクティビティ、とくに 「討議と演習」が必要であり(効果3倍)、 それにはダイナミクス設計が必要であること、 またその要求仕様の要点として、 教材制御演習支援態度表明支援 の3機能を述べてみました。

 ぜひ皆さまの『eLearning 要件定義書』あるいは『同 要求仕様書』に注入し、 周囲のコンサルやベンダーからも追加意見を徴求してください。 皆さまが成功組の4割に入れるよう、お祈りします。

『ECスクエア通信』フッター

[最後に] ご一読ありがとうございました。本号はいかがでしたでしょうか?

当ニューズレターは、 国内きっての専門家が KM/CRM を、次の「カテゴリ体系」で 論ずるもの。関心に合いそうなトピックを、 適当にクリックしてみてください。

トピックス一覧(テーマ別目次):MyPRG_Called_EC2_Topics.html
(0) 入門
全体図, 定義 ( ナレッジ", KM, CRM), サマリー( KM, CRM )
効果実測例 ( KM, CRM), なぜ有効か( KM, CRM
(1) 戦略
今後にご期待ください。それまでは こちらを(11/07 改訂!)
(2) 知識プロセス & テクノロジー (3) ピープル & テクノロジー (4) 業務プロセス & テクノロジー
Marketing ( 3 事例で学ぶ 33 の法則, CFAR/CPFR),
Sales & Logistics ( PRM, JIT 設計販売, WebEDI)
Service
(5) プロジェクト (N) 番外編: 重要イベント

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    Shuichi Ohta, 太田秀一 ************************************* /

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