[13] Constructivism は常に OK か、Behaviorism は常に NG か?
もちろん Constructivism だって「満点」ではありません。
したがって「妥協の精神」が必要となり、場合によっては、
Constructivism と Behaviorism は「併用と使い分け」が
最適になるようです。
第1に、Constructivism には「便利な標準テキスト」が、まだ
ありません。[11]で述べましたように、
同派の先生方は、学術雑誌では、とても熱心です。
しかし「分かりやすくて実用的で、包括的な教科書」を
出す活動には、不熱心です。むしろ教科書の点では、
[10]で有害呼ばわりしてしまった、
Behaviorism 陣営のほうが、よっぽど頑張ってます。
やや救いなのは、その「分かりやすくて実用的で、包括的な教科書」
の書き手が(彼らも実務家です。多くはコンサルであり、職業的な学者
じゃない)、自主的に Constructivism を学んで、その要素を、少しづつ、
その著書に、とり入れてくれてることであり、いまは市販の ID の教科書の
多くが、Behaviorism、Cognitivism、Constructivism 3派を混合してます。
では「当面の妥協策」は何か。おそらく
当面の勉強は、それら市販の教科書でやるとして、
そのとき、Constructivism のどんな長所がどこに活かされているかを
確実に検知するため、[12]の「
Constructivism Tips 群」のようなリストを併用する、という
ことになると思います。
第2に、Constructivism 流の教育の理想は、いまの eLearning 技術
ではフルには実現できません。
たとえば[12]でも書きましたように、
Constructivism な授業では、
「Learning by Building」を学習者に行わせるため、
彼らのメンタル・モデルを浮かび上がらせるような良い質問を、
講師が出します。ここまでは、eLearning でも可能と思います。
しかしその後、その質問への学習者の反応を検知するステップは、
どうでしょうか? 回答内容だけでなく、質問された本人の表情・口調、
また、それ以外の学習者のつぶやきやうめき声まで検知したいとなると、
いまの eLearning 技術では、難しくないでしょうか?
たとえば私は、
自分の「KM/CRM 1日コース」
では、視野を180度近く広げて、視野の片隅にいる受講生の表情変化だって
見逃さないようにしてますし、聴覚は子供の頃から実は動物的に敏感なので、
教室の片隅で起きた「つぶやき」ですら、聞き逃しません。その発生源は、
音のした方向から、直ちに検知できます。
これらの受講生からの反応が全的に検知できてはじめて、Constructivism な
講師は、受講生各人の理解度、そして教室全体の
理解度をリアルタイムに推定し、それに応じて繰り出すヒントの「難易度」を
上下させる、という「芸当」ができるのです。
では「当面の妥協策」は何か。おそらく
私が
自分の「KM/CRM 1日コース」でやってるように、授業を
に2分割することだと思います。そうなれば、eLearning は後者で
活かせます。
第3に、Constructivism 流の教育は、eLearning かすると、
かなり手間がかかります。
たとえば、上記[12]の後半にも書きましたように、
学習者どうしメーリングリストで、Q&Aを交換するのは、
各人のコンセプト・マップの「拡張」を促すのには良いのですが、
その会話がヘンな方向に行ってしまっては、台無しですね。
したがって講師には「講義当日だけでなく、その前後も
Q&Aのファシリテーションをしてください」とお願いしなければ
いけないでしょうし、そうなると講師も「うわー、そいつはタイヘン
だなぁ」なんて思ってしまうかも。
では「当面の妥協策」は何か。追加の料金を、講師に払うことです。
そもそも、あなたの雇う講師が、Constructivism の哲学をお持ちで、
上記[12]でリストアップしたような特殊な技能も
駆使できる方であるなら、当然、講師料は、基本料金の段階で、
他の講師より高くて当然です。
さらに、その講師に「講義当日だけでなく、その前後も
Q&Aのファシリテーションをお願いします」とお願いする、
ということは、その分の追加料金も、当然、必要です。
その分の教育効果は確実にありますので、これは、払った方が
正解ですね。あとは、その原資の捻出でしょう。
さらに第4に、Constructivism 流の教育は、初学者には向かない
かもしれません。たとえば、[5]でも前出の
日経デジタルコアのMLで
早稲田大学客員教授の中野潔先生 *が、本号の 5/10版を
ご覧になっていわく [dc-home:84]、
「"Learning by Building"は、本当に何かが学びたいと
思っている人、あるいは、自分に足りないことを内省して
わかっている人には、有効だと思いますが。
小生は、頭が古いのか、新卒3年目ぐらいまでを考えると、
"Learning by Building"の意味があまり、ぴんときません」
これは全く、お説の通りで、そもそもConstructivismは「学習者の
頭の中の既存ナレッジ」を活用しましょう、
という思想なんですから、その「既存ナレッジ」が頭の中にない
人たちには、あまり向きませんよね。たとえば、私が新入社員時代、
やや Constructivism 風のケース演習を経験したときも、同様でした。
- 未熟者どうしグループ討議をやっても、あんまり
良い答が、Build できないなぁ。(当時の感想)
- しかし長期的には良かった。キャリアが上がるにつれ、
異なるスキルマップを持った人からの協力は欠かせない。
その習慣を、若い頃から付けるのには有益(今の感想)
要するに、Constructivism と Behaviorism は「一長一短」。
Behaviorism が向いている部分があるなら、それは遠慮なく使えば
よいのであり、要は「プラグマティズムの精神」での「併用と使い分け」
が大切ですね。
実際、当分野で調査&コンサル実績豊富な藤本徹さんいわく [e-learning:0124]
「Constructivism は大まかに言って、Behaviorism的な知見も
必要に応じて取り入れることは当然あると理解しています。
具体的な学習活動の中にはBehaviorismの考え方が
有効な場合もあるわけなので、それにも柔軟に対応できるのが
よいConstructivism(?)だと勝手に解釈してます」
この「プラグマティズムの精神」を、本号の結論としておきましょう。(^^)
・・・・ということで以上、たいへん長くなってしまいましたが、
ASTD 国際大会へむけた「予習特集号 - eLearning 編」をお届け
いたしましたが、いかがでしたでしょうか?
結論のみまとめますと、前節末尾のように「LO 指向の ID が今年は
重要。Constructivism や KM のコンテキストも念頭に」ということ
になりますね。
ここまでご一読いただき、どうも有り難うございました。m(__)m
[後記1] ASTD 報道番組に出演します!(有料インターネットTV)
http://www.newsicast.tv/
ということで「日本の KM/CRM」にとって、ASTD の今大会は必須と
私は思います。だから当然、私自身、それに参加します。
しかし単に「参加する」にとどまらず「解説委員」もやります。
というのも今大会の模様は、
米 Newsicast 社 *により後日、
インターネットTVで報道される予定なのですが、
その番組で私は「解説委員」かつ「監修者」として登場予定。
その監修の「目的と方針」は目下、次の通り。
- 目的: 米国の People Management 最前線を、3時間で伝える!
- 方針:
- KM/CRM に必須な3分野に注力し、
主要講演を網羅
- 各講演の、狙い・骨子にとどまらず、
できるだけ講演者の将来意向をも紹介し、
当分野の今後を占える内容とする
- 全体の「まとめ」を30分ほどで私が行い、
エグゼクティブ・サマリーに代える。
ふと気づけば私は昨秋より、大前研一氏率いる衛星TV局「ビ
ジネス・ブレークスルー」で
60分単独講義の映像デビュー *を、数回にわたって
果たしていますが、今回は、インターネットTV局で初デビュー。
さいわい今回も、プロのカメラマン、そして米国のTV局でご活躍の
プロのキャスターのお世話になることになりました。有り難いことです。
私も根性入れて準備します!
[後記2] 当番組に「ご出演」「ご要望」をお願いします!
ということで・・・
当大会にご参加予定の皆さん! 現地でお会いしましょう。
よろしければ私と一緒に、当番組に、ご出演ください。(^^)
また当大会にご参加予定でない皆さん! 次をご覧の上、
「どれ」を私に紹介してほしいか、
ご要望をメールでお寄せくださいませ!。
できるだけ皆さまのご要望に合った、良い番組を作りたいので、
ご要望を、どしどしお寄せくださいませ。
[後記3] 「KM&CRM 1日コース」。今年もやります!
その「準備」の余勢を駆って、今月は「KM/CRM 1日コース」を行います!
eLearning や、Change Leadership や、Human Capital Measurement
に関する新知見が炸裂!するはずので、ぜひご検討いただきたいと
思います。
日程は次の通り
- クラス#27: 2002年05月24日(金), 9時〜18時(残席=8)
- クラス#28: 2002年05月28日(金), 9時〜18時(残席=10)
その特徴は次の通り。どうぞご期待ください。
- 米国流 KM/CRM 方法論のエッセンスを、1日で圧縮
(ただし分量は、パワーポイント250画面)
- かつ"Learning by Building"。グロービスご協力の
「ケース演習」があり、それをチーム単位で討議
することで、自力で「分析と提言」という行為を
行っていただけます。
- 今年から全教材を、事前にオンライン提供。
しっかり予習できます。
過去の受講生の声は、こちら!
過去のクラス風景は、こちら!
お申込は、こちら! *
[後記4] 国際大学と慶応大学MCCで、講義します。ぜひご参加を。
6月と7月、次のマネジメント教育機関で、CRM を講じます。
私も大学院での講演は、2000年のミネソタ経営大学院のとき以来(そ
の節は國領先生、お世話になりました)ですので、気合い、入ってます。
また(2)は公開型ですので、学外の皆さまもご参加いただけます。
私も出講しますが、何よりの目玉は、
- 「トヨタ・ソニー・アスクル」などの著名企業の
マーケティング戦略の「現在」がお聞きになれるほか、
- KBS現職教授の池尾先生の、双方向ファシリテーションの奥義を
ナマで学ぶチャンス。同時にそれで各人が"Learning by Building"
を実体験できます。
ぜひ皆さまも、上記(2)の池尾先生のコースをご検討くださいませ。