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皆さん、こんにちは。初めての方、はじめまして。
発行人の太田です。しばらくの間、私の怠慢により 発行が遅れてしまいましたが、いかがお過ごしでしょうか。 ということで、すっかり間も空いてしまい、一部の方はお忘れかと思 いますが、当レターではいま、「ウエッブEDI」を連載で論じており、う ち「No.15」と 「No.16」では、 中小企業向けの話をしてきました。 対しまして本号と次号では、大企業向けの内容ですが、うち本号の結 論を先に申しますと、こうなります。 「ウエッブEDIはもともと『使って天国、作って地獄』だが、 後半の『地獄』は『いまどきのERP』を使えばラクになる」
[1] ウエッブEDIは「使って天国、作って地獄」 ウエッブEDIが実に「簡単」であり、かつ「リッチ、クリーン、イ ンタラクティブ」という「3つの付加価値」を有することは、すでに論 じました。 しかし同時に、このウエッブEDI。「使って天国、作って地獄」の 典型であるのも事実です。 ますウエッブEDIを使う側ですが、これは簡単なんです。
これはすごく簡単で、オンライン通販でモノを買ったことのある人な ら、誰でもできます。しかし、ウエッブEDIを作る側は、どう なんでしょうか。
これは非常に難しいですよね。 [2] ウエッブEDIは「基幹系との結合」が前提 なぜか。とくに第3項の「インタラクティビティ」を実現するには、 基幹系との結合が要るからです。たとえば 例1)お客さんが買ってくれたら、予定納期を示したい となれば、在庫データベースはもちろん、場合によっては、製造予定や 配送予定も見に行かないといけません。 また、次のような場合は、どうでしょうか。
例2)お客さんがそれまでに買った累積量に応じて、
ここでは、顧客データベースの「累積受注量」欄や「与信限度額」欄を見 ないといけません。 そして両例とも「見に行く」だけではダメで、「見に行った結果はこ うでした。あなたの値引率は2割です、はい、あなたは3割です」とい うふうに、お客さんごとに異なる結果を、その場でぱっとHTML化し て、お客さんのブラウザ画面に送出しないといけません。 つまり次の3点が難しいのです。 (1) 基幹系のデータを読みに行くこと。たとえば上記の顧客データ ベースや在庫データベースです。 (2) 見に行った結果を、その場でぱっとHTML化すること (3) そこでお客さんが「確かに注文します」とボタンを押したら それで基幹系のデータを更新すること(在庫引当、出荷予定、 ときには製造予定など)
[3] そこで要るのがERPの「4層構造」(SAPのケース) 要は、基幹系そのものがウエッブ対応してないとダメなのですが、そ んなの、ほぼ不可能ですよね。そもそも20年前、大型コンピュータ用 に基幹系のシステムを作ったとき、ウエッブなんてものが出てくるとは、 誰も考えてないわけですから。 そこで2年ほど前から、それはお困りですね、我々が何とかいたしま しょう、と言い始めたのが、ERP(注1)ベンダーです。 たとえばSAP社。彼らは、それまでご自慢だった「3層構造」を「 4層構造」に変えました。★印のところに「インターネット層」を追加 したのです。
詳しい説明はこのページの通りとして、要するにERPとは「 最新技術を使った基幹系用のパッケージ・ソフト」のこと。 だから先進的なユーザーに昔から好んで使われ、勢い、 それら先進ユーザーからの先進的な要望が続出。今回も「 インターネットを基幹系とつなぎたいのだが」と真っ先に 言われて、対応に走った。 注2) 業務データベースとの間で情報入出力を行う 注3) 商品を出荷したら、在庫高と在庫引当を同数へらし、売上と売掛を同額たて、 請求書を発行する、などの処理を行う 注4) クライアント端末との間で画面入出力を行う
[4] SAP「インターネット層」で動く「Eコマース・シナリオ」 ではSAPのERPは、この「インターネット層」で何をしているの でしょうか。乱暴に言うと、答は次の通りです。
たとえば、ある日用雑貨の小売店サイトに、とある女性客が洗剤を 買いに来た、としましょう。そこでは、以下のような会話が進みます。 女性客(A)が何か言うと、それにお店の営業マン(B)が答える。 1A) 女性客=ブラウザ → 営業マン=SAPインターネット層 「さぁ、今からこのページでモノを買います」 1B) 女性客=ブラウザ ← 営業マン=SAPインターネット層 「はい、手前どもには4種類の製品グループがあります」 2A) 女性客=ブラウザ → 営業マン=SAPインターネット層 「じゃ、洗剤グループには、どんなものがあるの?」 2B) 女性客=ブラウザ ← 営業マン=SAPインターネット層 「はい、20種類の洗剤があり、各々、こんな仕様です」 ここでSAPインターネット層は、いちど基幹系まで「商品データベ ース」を読みに行っています。そして、その情報をぱっとHTML化し て、ブラウザに返しているのです。 さらに次に進みましょう。 3A) 女性客=ブラウザ → 営業マン=SAPインターネット層 「じゃ、これを2つ。これを3つ。全部でおいくら?」 3B) 女性客=ブラウザ ← 営業マン=SAPインターネット層 「はい、定価ベースで300円です」 「ところでお客さま、お名前をどうぞ」 4A) 女性客=ブラウザ → 営業マン=SAPインターネット層 「あら、あなた私を知らないの? いつもクッキーを食べさせてるじゃないの、 いいかげん、顔くらい、覚えなさいよ。私はね、小仲と申します!」 4B) 女性客=ブラウザ ← 営業マン=SAPインターネット層 「あ、これは申し訳ありません。クッキーで思い出しました。 小仲さまですね。では8割引で60円です」 5A) 女性客=ブラウザ → 営業マン=SAPインターネット層 「まぁ、いつも気を使っていただいて、どうもありがとう。」 ここでSAPインターネット層は、基幹系まで「顧客データベース」 を読みに行き、その「累積購入額」から、小仲さん向けの値引率を算出 し、それをぱっとHTML化して、ブラウザに返しているのです。 さらに、この営業マンが「リコメンデーション・エンジン」を装備して いれば、さらに次のような会話が入るかもしれません。 5) 女性客=ブラウザ ← 営業マン=SAPインターネット層 「ところで小仲さま。今回は、いつもと異なるブランドをお買い求めですね。 次回からも、今回お決めのブランドになさいますか?」 こうやって、小仲さんの「好み Preference」を記憶した営業マンは、次回からは、 最初の商品提示の段階で(上記2B)、小仲さんご指定のブランドを、画面の 上の方に出したりも、するでしょう。 さて以上が「Eコマース・シナリオ」(注)。会話劇みたいでしたね。 女性客が何か言うと、それに営業マンが答える。この間、営業マンは、 ときどき後ろを振り返り、商品台帳や顧客台帳を見たりもします。 お時間のある方は、その営業マンの動作を、頭の中で演じてみましょう。 それが「いまどきのERP」の動作です。 そして上記のような「会話劇」のことを、正式には、SAP社の用語で 「インターネット・ビジネス・シナリオ」と格好良く言うわけです。
[5] SAP「Eコマース・シナリオ」は「作って地獄」を救うか では上記のシナリオにおける最大の難所はどこか。それは、女性客の 動作ではなく(なぜなら「使って天国」ですから)、営業マンの動作 ですね。 それも「ときどき後ろを振り返り、商品台帳や顧客台帳を開く」とこ ろです。ここが難しい。台帳はどこか、欲しい情報は台帳のどこにある か、そもそも読んで理解できるのか。理解したものを見栄え良くお客に 提示できるか。 この難所を克服するため、SAPは「BAPI」という仕組みを作り ました。正式なSAP用語では「ビジネスAPI」ですが、これは「助 手に対する定型命令」のようなものだ、と思いましょう。 実は、上記の営業マンには、何人か助手がいて、その助手たちに営業 マンは、こんな命令を頻繁にするんです。 「おい君、商品台帳を読んできてくれ」 「おい君、顧客台帳を読んできてくれ」 こうした定型命令文がBAPIなのです。たとえば次のごとし。 1B) 女性客=ブラウザ ← 営業マン=SAPインターネット層 「はい、手前どもには4種類の製品グループがあります」
「おい君、ProductCatalog.Getlayout してよ」 このワケの分からない命令文は、こういう意味なのです。 「おい君、商品台帳、大まかに見てきてくれや」 また、次のような例を考えてみましょう。 2B) 女主人=ブラウザ ← 営業マン=SAPインターネット層 「はい、20種類の洗剤があり、各々、こんな仕様です」
「おい君、ProductCatalog.Getitems してよ」 このワケの分からない命令文は、こういう意味なのです。 「おい君、商品台帳、も少し詳しく見てきてくれや」 これらBAPI命令の特長は「短いこと」です。だからラクチンだし、 間違わない。逆に、この命令が次のように長かったとしましょう。 「おい君、手と足を交互に動かして書棚のとこに行って、上から 2番目、左から5番目のファイルをとって、その231ページ目を 開いて、その商品一覧のとこ、こっちにくれや」 面倒ですよね。それに、つい途中で間違えてしまいそうです。実は、こ れが「作って地獄」の正体なのですが、BAPIを使えば、それが、か なり楽になるんだそうです。
[6] 補足:本号で参照したウエッブ文書 ということで以上、ウエッブEDI用のサイトを構築・運用するため、 SAPなどの「いまどきのERP」が何をしてくれるか、を超特急で見 てきました。 その動作の骨子は、次の通りです。
かくして、結論は次の通りになります。
「ウエッブEDIはもともと『使って天国、作って地獄』だが、 後半の『地獄』は『いまどきのERP』を使えばラクになる」 複雑なテーマを超特急でご説明しましたので、やや話に無理があった かもしれません。詳しく、そして正式に本件を理解されたい方は、次の 文献をご高覧ください。
また、もっと細かい情報を勉強されたい方のために、次の文献もあげておきます。 この方面について体系だった勉強が未だの方は、ぜひご一読ください。けっこう ためになります。
ということで以上、SAP社のR/3を例に「いまどきのERP」が 「ウエッブEDI」の構築にあたって果たす重要な役割を論じてきました。 昔は「EDI」といえば「EDIソフト+VAN」のことでしたが、 これからは「ウエッブ+ERP」のことになるでしょう。 各種取材や資料徴求に応えていただいたSAP社の深作さま、庄司さまには、 厚く御礼申しあげます。 。。。ということで本論は以上で終わり、以下、恒例の近況報告です。
[後記1] (6/03/98) 『月刊イントラネット』サイトに当レターが登場 当レターの読者数は、この10日間で約700人も増えました。これは過 去最高の3倍、過去平均の7倍です。 この「異常値」に飛び上がって、よく調べてみたら、なんと当レターは、 メジャーなサイトで紹介されていたんですね。 それもバナー付き。これが実に効果的でした。このサイトの右上に『 ECスクエア通信』のバナーがあり(黒地に黄色)、それをクリックい ただくと、画面中央のフレームに私のページが現れますが、これが画面 左の制御フレームの色調と、見事にマッチ。けっこうキレイです。 この場をお借りして『月刊イントラネット』の皆さま、ソフトバンク の皆さまには、厚く御礼申しあげます。 読者の皆さまも、ぜひ上記サイトで、当レターのバナーをクリックしてみ てください。
[後記2] (5/13/98) 『ノーツ・マガジン』に「ConceptBase」登場 そのソフトバンク発行の雑誌は、よく私も読んでますが、次の2つが 気に入っています。
その『ノーツ・マガジン』6月号(ひとつ前の号)には、当レターでもご 紹介した「ConceptBase for Notes」が2カ所で登場しました。 (1) 麗澤大学の藤森洋志先生のインタビュー記事の末尾(p36) (2) 「新製品情報」コーナーのトップ記事(p137) (1)の藤森先生は、ノーツの世界ではすごく有名。第一人者のおひと りですね。たまたま3年前、私は生意気にも同先生と著書の交換などを やりましたが、その後も同先生は、ノーツの新リリースが出るたびに、 有力コンピュータ誌で、最新動向を的確に論じておられます。 (2)の記事も、たいへん結構でした。発表内容をよく理解し、要領よ くまとめてあります。さすが専門誌ですね。「一般紙誌にありがちな幼 稚な誤解(注)」などは皆無でした。
[後記3](6/08/98) 『日経コンピュータ』でナレッジ・マネジメント 私は米国でいくつかの団体に入っていますが、そのひとつが「IEEE」。 アイ・トリプル・イーと読みます。そこに「Computer Society」という 下部組織があって『Computer』という雑誌を出しています。 その『Computer』98年3月号に所載の「ナレッジ・マネジメント」の 記事が、『日経コンピュータ』6月8日号で翻訳されました。 皆さん、もうお読みになりましたか? これは読まないと損するくら いの好論文と思います。ナレッジ・マネジメントの概要が、ほんとに「 あっ」という間に分かってしまう。 米国でのナレッジ・マネジメントの盛り上がりの一端を示す例として、 ご一読をお勧めいたします。
[後記4] (6/02/98) IBMの「e-business」サイトに岡本さんが寄稿 私が数年来、経営情報学会のEDI研究部会でご指導いただいている、 岡本明雄さんが、IBMの「e-business」サイトに寄稿されました。 http://www.infoseek.co.jp/EBZ?pg=ebz.html 「オンラインを利用したビジネスのモデルとしての航空・旅行業界の 系譜」 このエッセイを、不肖・私が失礼をも顧みず、大胆に要約しますと、 このようになります。
「今のe-businessの特徴は、次の点で、航空業界のオンライン座席 予約システムに似ている こう要約してしまうと、岡本さんの原文の香りが吹っ飛んでしまって まずいのですが、原文そのものは、史実に沿った綿密なもの。たいへん 読み応えがありました。これも、ご一読をお勧めします。
[後記5] (5/31/98) 前川レポート第2弾! ソフト軽量化のススメ 当レター号外「P-01」で 登場した、前川徹さんが、新著『ネット・ビジネス最前線』スパイク社を送って くださいました。そう、あの「前川レポート」の第2弾です。 前著と同じく、(1)調査会社・ワシントンコア社のバックデータに裏 打ちされてるから安心、(2)一部日本のマスコミと異なり、広告予算で 論を左右されてないから安心、(3)ただし前川さんらしいスパイスが効 いてて楽しい、という3つの特徴があります。安心二重丸ですね。 これもご一読をお勧めします。 とくに私の印象に残った箇所は、次の4カ所でしたが、個人的には、 (4)の論点が最も関心をひきました。 (1) 本便でも主題のウエッブEDI(p66以下) (2) 今のご専門であるインターネット・セキュリティ(第2章) (3) 本質をよく突いた「マイクロソフト小研究」(第4章) (4) 過剰な機能で重量化した今のPCソフトへの疑問(p388) ちなみに私は、3種類のワープロソフトを自分のパソコンに入れてま すが、それらは専ら、人から送られたファイルを「読むためだけ」に使 っており、ふだん文章はエディターで書いています。エディターは軽量 ですから、思考のスピードを妨げません。ふつうのワープロは重すぎて、 知的な作業には向かないようです。 前川さんご自身は一世代前のマックOSの下で「クラリス・ワークス」 を使っておられるとのこと。スマートですね。クラリスは軽量です。い つかは私も、前川さんのように、軽量ソフトでスイスイ仕事、といきた いものです。前川さん、貴重なご著書を、有り難うございました。
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