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Nov.10, NEC サイトで論説発表         
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皆さん、こんにちは。初めての方、はじめまして。

 発行人の太田です。

 いま弊紙では、「サイバー商法の成功鉄則」を探っておりますが。。。
 
  ・No.10 個人商店に学ぶサイバー商法の原型
  
  ・No.11 中小企業に学ぶサイバー商法の原型
  
  ・No.12 ベンチャー経営に学ぶサイバー商法の原型
  
本号「No.11」では、先般、日経インターネットアワードを受賞した、
久米繊維工業グループのTシャツ・サイバー通販事業をとりあげます。

 なお同グループは、Tシャツ製造で国内最大。連結で売上47億、社
員260人ですが、このサイバー事業は、同グループの一角、Tシャツ・
ギャラクシー社で行っており、これ単体では売上3千万、社員2人です。

 また、この事業をリードしているのは、同グループの中核企業・久米
繊維工業社長の久米信行社長。『日経情報ストラテジー』97年10月号の
「チバレイ対談」などで、おなじみの方も多いと思いますが(注)、実
は、私は同社長と、経営情報学会のEDI部会で、もう4年もお付き合
いしていますので、以下、勝手に「久米さん」とお呼びします。
 


[1]  はじめに: 拡張CSF表      (前号+本号)

  まず前号の「CSF表」を拡張し、前号と本号を両方カバーさせてみ
ましょう。(15)以降が本号の範囲ですが、要は「後方が賢くて前方が
果敢なら、百戦も危うからず」ということです。 

eMarketing を成功に導く CSF リスト
(当リストの 「14個版」はここ、 「23個版」は下記の通り、 「33個版」はここ

  前  方 後  方
組織   ( 1)独立採算制
ナレッジ (14)言語表現力 ( 3)専門能力
コンピテンシー ( 4)本心直結の接客術
( 5)指揮官先頭
( 2)事業選定能力
(10)自己定位能力
(11)顧客選定能力
(17)コマケ相手選定能力
(20)起承転結のモデル化能力
(21)「勤勉で合理的な職業人」
(22)ドリーム・オープン
(23)学習の意欲・能力
メディア ( 7)3種のメール ( 8)「2E」なサイト
(15)お客さま参加型サイト
プロセス ( 6)サイバーIMC
(19)クロスIMC
( 9)サイバー口コミ
(18)乗数効果の高い広報
(12)物流&決済
(16)マス・カスタム化
情報システム   (13)メール検索



[2]  CSF(15) お客さま参加型サイト(後方メディア)

  ではまず、同社のサイトに飛んでみましょう。
 
   http://www.t-galaxy.com/index.htm

 Tシャツを着た「濱島礼子さん」が、目に飛び込んできましたね。つ
いでに「Ms.T-MODEL」という文字列もクリックしてみましょう。濱島さ
んのお顔も出てきました(美人ですね)。趣味はスノーボードで、古着
屋さんで働いておられる、とのことです。

 というわけで同社のサイトは「お客さま参加型」。それもプロのモデ
ルではなく、一般のお客さんが自分の好きなTシャツを着て登場します。

 あのハーレイ・ダビッドソンと似てますね。同社のユーザー会・会報
には、ハーレイ愛好家たちの勇姿が載っていて、「この週末、私はどこ
そこに行って、こんな雄大な自然を堪能しました」なんて写真が載って
おり、「ツーリングの楽しさ」を「お客がお客に」訴えています。

 これは「バイクの性能」を「会社がお客に」訴えるより、ずっと効果
ありますね。

 久米さんの場合も同じこと。「私のTシャツ、いいでしょう」と「お
客がお客に」訴えています。しかも、それがいきなり「トップページに」
どーんと出てくる点、かなり極端ですね。


[3]  CSF(16) マス・カスタム化 (後方システム)

 また、次のページには、ペアルックのTシャツを着てご機嫌の母子が
出てきます。

  http://www.t-galaxy.com/tatsujin/tj96081.htm
  
よく見ると、そのTシャツの胸の部分には、3歳の息子が幼稚園で書い
た「お母さんの絵」が印刷されている。

 これが世に言う「オリジナルTシャツ」。量販店で量販されてる標準
製品を買うのではなく「自分のシャツは、自分で作る」。

 それを支えるのが「マス・カスタム化製造システム」です。上例です
と「お母さんの絵」をスキャナーかデジカメで取り込み、それを無地の
Tシャツに熱転写すると、「僕だけのTシャツ」ができてしまう(厳
密に言うと工程はもう少し複雑なのですが、詳細は略します)。

 つまり「究極の多品種少量製造」システム。
  
 これで会社は、在庫が減らせます。プリント済で転用のきかない製品
在庫でなく、無地で汎用性ある仕掛品を必要量、持てばいいのです(デ
ル・コンピュータと同じ原理ですね)


[4]  CSF(11) 顧客選定能力 (後方コンピテンシー)

 そして何より、作ったお客さんが友達に自慢できる。息子が描いてく
れた自分の「絵」を、お母さんは「着て歩く」ことができ、当然、お仲
間に「そのTシャツ、どうしたの!」と質問され、「かくかくしかじか
で久米さんショップで作ってもらったのよ」と説明してくれます。

 素晴らしいですね。こうして久米さんが売り込まなくても、モノは自
ずと売れてしまうようになりました。

 まず先駆的な顧客から愛され、仲間に自慢してもらうこと。これは、
洋裁のうまい女性にミシンを売り、エアロビクスの先生にそれ用のシュ
ーズを売ったのと、同じことですね。とても効果的です。

 ところでこうした自作派の消費者を、アルビン・トフラーは「プロシ
ューマー」と呼び、それが将来、増えるだろう、と予言しています。

 そして久米さんも、そう考えています。プロシューマーは、まだ少な
いけれど、そのうち増えていくはずだ、ならば自分は、そんな彼らを真
のTシャツ愛好家と位置づけ、応援しよう。。。それが久米さんの「ド
リーム」でした。

 そして彼らを応援するだけでなく「表彰」し、「Tシャツの達人」と
して「認定」しよう。。。これが久米さんの戦略でした。上例の3歳の
男の子にも「雅号:まさ風」を授与しました。

 ノベルやマイクロソフトの「技術者認定制度」と同じこと。これは下
手なマイレッジ・プラン(数量割引)より、ずっと強力です。なぜなら
皆が、その「免状」を壁に貼り、社外の人たちに見せてくれるからです。


[5]  CSF( 2) 事業選定・結合能力 (後方コンピテンシー)

 しかしドリームだけでメシは食えませんし、一部少数のプロシューマ
ーだけが相手ですと、数量が出ませんから、上記の「マス・カスタム化
製造システム」の固定費をカバーできません。

 そこで久米さんは、法人顧客を狙いました。上記の濱島さんは、とあ
る若手デザイナの作品を、パソコン経由、Tシャツの胸部分に熱転写し
ているわけですが、そんな実例を。。。例えば。。。

  ・高島屋のバイヤーが見れば「ああ、ここで試作品をいくつか作っ
   てみれば、商品企画もラクだね」と思うかもしれない
   
  ・アパレルの人が見れば「あ、展示会用のサンプルなら、ここで特
   急小ロット対応してくれそうだ」と思うかもしれない
   
  ・また一般企業のマーケティング担当者が見れば「お、次のイベン
   トでは、ロゴ入りTシャツでも使うか」と思うかもしれない。

 こう久米さんは考え、本当に、そうなりました。先駆的なプロシュー
マーを前面に立てつつ、目先のボリュームは法人で稼ぐ、というビジネ
ス・モデルを回転させているわけです。

 いいですね。私は「良い戦略はDFSSAMだ」なんて言ってますが、
久米さんは、まずプロシューマーに Focus しました。それはTシャツ
愛好家たるものこうあってもらいたい、という強烈な Dream があった
からです。

 そして、そのための後方システムを、法人顧客にも転用し、おかげで
複数事業間の Synergy も確保。これは最初にプロシューマーに目を付
けた、その Sequence が正しかったからですね。


[6]  CSF(17) コマケ相手選定能力 (後方コンピテンシー)

 残る2つのうち「M」は後述するとして、「A」はアライアンス。本
件の文脈では「コ・マーケティング」ですね(以下、コマケ)

 まず次の「T声人語」コーナーをご覧ください。
 
  http://www.t-galaxy.com/saka/back.htm

 先ほどの「お客さま登場コーナー」に対して、これは「著名人登場
コーナー」です。登場するのは、次の方々。

  ・イージーの岸本さん     (サイバーTシャツ通販の神様)
  
  ・シナジープラニングの坂口さん(衣料業界専門のコンサルタント)
  
  ・ケイワンの柳田さん     (同社顧客にして著名ネティズン)
  
  ・ホームワークスの井上さん  (週刊ファッション情報等主宰)
  
  ・村山らむねさん       (ご存知、サイバー通販の達人)
  
これらの方々は

  ・ネットの達人ですから「サイバー口コミ」の中心点として、
    ・久米さんサイトに寄稿したことを、自分の友人に、ひろく告
     知してくれます。
    ・それも電子メールで効率よく、一斉同報してくれます。
    
  ・この世界では著名人ですから、その方々が「寄稿している」だけ
   で集客効果も大きくなり、Tシャツ分野での「ポータル・サイト」
   に近いものになります。

 また「若手デザイナ登場コーナー」もあります。たとえば冒頭で見た
濱島さんのページですが。。。

  http://www.t-galaxy.com/model/md98011.htm
  
中段の「T-Modelが着ているT-ARTと作者のご紹介」をクリックすると、
そのシャツの絵柄を創った若手デザイナー、依知川さとむ先生が出てき
ます。ちなみに同先生は、マチスやピカソがお好きなんだそうです。

 こうして著名論客やデザイナーの方々に「発表の場=コンテント・プ
ラットフォーム」を提供する。すると先生方は、ご自分の作品もろとも、
久米さんサイトの存在を、仲間に宣伝してくれるわけです。

 さらに久米さんは、関連メーカーともコマケしてます。たとえばアル
プス電気。ここはパソコンと接続できるTシャツ用アイロンプリンター
を出していますが、同社が某イベントに出展したとき、久米さんは、同
社の販促キットに、自社のTシャツを提供しました。

 要するに「見込み客の共有」。ターゲット客層が共通で、かつ事業分
野が異なる2つの会社が合同で行う販促。これも効果ありました。


[7] CSF(18) 乗数効果の高い広報戦略 (前方プロセス)

 では、久米さんの広報・販促が効果的だった理由を、まとめてみまし
ょう。

  7A) 上記[6]の通り「社外勢力」とうまくコマケした
  
  7B) 当然ながら「タイミング」も良かった。サイト開設時や、夏
    季に力点を置いた。
    
  7C) そして今から説明するように「電子情報の再利用」をした。

 7C)の「再利用」は「T人 in the Press」に明らかです。つまり、7A)
7B)の努力により、久米さんサイトは、メジャー誌に記事として取りあ
げられたのですが、その記事をサイトに掲載したのです。

  http://www.t-galaxy.com/press/index.htm

 これが米国のハイテク業界によくある「プレス・カバレッジ」。とても
効果的ですから、皆さんも、ぜひ検討してください。

  ・雑誌記者にとっては、これらの過去記事をざっと読めば、記事が
   書きやすくなります。→ますます記事が増え→以下、好循環。
   
  ・信頼度がケタ違いに上がります。次の2つを比べてみましょう。

    ・プレス・リリース: 「自社が」出した「プレス向け」文書
    ・プレス・カバレッジ:「プレスが」書いた「一般向け」文書

 よく自社ページに「プレス・リリース」だけ出して満足している会社
がありますが、もったいないですね。これでは、一回の情報を一回使っ
てるだけです。おまけに信頼度も向上してません。

 それに対し「プレス・カバレッジ」なら、一回分の情報を、何度も「
多重活用」できて、かつ信頼度も上がりますから、その効果は、数倍ど
ころじゃ、ありません。これが[5]で述べたDFSSAMの最終項「乗数
Multiplier」です。

以下、プレス・カバレッジの代表的とおぼしき3スタイルをご紹介して
おきますので、参考にしてください。

 1) 市販紙誌から(自社に都合の良い)部分を、数行、抽出したもの
 
 http://www.wwf-uk.org/rivers/page5.htm
    
 このスタイルは、
  
   ・ちょっとズルイんですが、
   
   ・読みやすい点が、マーケ専門家の間では好評です。
   
   ・それに作るのも簡単です。

 2) 該当記事へのリンクを一覧表ス タイルで淡々と並べたもの

 http://www.t-galaxy.com/press/index.htm

 久米さんサイトが、これです。 このスタイルは、
 
   ・とても客観中立的な印象を読者に与えますので、
   
   ・もっとも一般的です。それに、
   
   ・作るのも簡単です。

 3) やはり該当記事がウエッブ化されている場合、そこへリンクを張り、
  かつ、魅力的なタイトルを付けたり、囲みをつけて目立たせたもの

 http://www.benchmarking.com/cfar.html
    
  このスタイルは、
  
   ・とにかく目立ちますから、クリック率は高いですし、最悪、来
    訪者がクリックしてくれなくても、「ああ、あの雑誌で取り上
    げられたんだ。偉いなぁ」と思ってくれますから、
    
   ・認知率も上がります。つまり3スタイル中、最も効果的です。


[8]  CSF(19) 12手法にまたがるデュアルIMC(前方プロセス)

 以上が、同社のマーケティング・コミュニケーション(以下、マーコ
ム)のうち「広報・販促」の概要です。以下では、「宣伝・DM」の様
子を一瞥しましょう。結論を先に言うと、いい「IMC」になってます。

 このIMCとは、前号[7]節でも申しましたように
 
   「広報・宣伝・DM・販促・人的販売など【多数の手法】を連携
    させたマーコムのことで、顧客へ一貫したメッセージを伝える
    のが目的」

 久米さんも「サイバーIMC」では「7つ手法」をうまく連携させて
います。

 8A) 後方では「お客さま登場型かつ著名人登場型」のサイト[2][6]
 
 8B) 前方では「4つのメールと2つの広告」
 
  -1) 同報メールその1「縁尋奇妙」  
  
     ・久米さんが講演先や学会などで知り合った約300人に送
      っているもの。宛先の業種・職種・年齢などは極めて多様

     ・もともと数年前、BPRを始めたとき、社内幹部に流し始
      めた「経営日誌」が発端。「自分の考えを有形化し、後で
      読み返して参考にできるように」との動機もあった

     ・それを当時のコンサルタントや、学会や勉強会の友人、取
      材に来た記者など、社外にも流すようになり、

     ・そのうちインターネットの世界で、とても有名になり、
      『日経ベンチャー』のサイトでも公開されることになった。
        
        
  -2) 同報メールその2「サイト更新通知メール」
  
     ・これは弊レターと似たシステムで、購読を申し込んだ人
      に送られる。申し込みは「オン・デマンド型」で、配信は「
      プッシュ型」
      
  -3) 同報メールその3「iMiメール」 

     ・iMiのサイトで「私の趣味や関心事はこれこれですから、 
      それに該当する電子DMなら送ってくれていいですよ」と
      登録した見知らぬ人に出すもの

     ・これをある時期、久米さんは毎月1000通出すよう、iM
      iに依頼。

      
  -4) 普通の直接メール(これは当然)
  
  -5) 宣伝その1「FIRST NEWS」 
  
     ・およそ4万人の購読者に毎週届くURL案内メール

     ・ただし1件1行なので「見出しを作る能力」が要る。それ
      さえあれば、とても有効(私も使いました)
      
  -6) 宣伝その2「『日経netn@vi』のバナー広告
  
     ・定説通り、バナーはクリックスルー率がよくないが、率
      より絶対数で見ると、効果は歴然だった、とのこと。

 以上の「サイバーIMC」に加え、久米さんは「リアルIMC」でも、
がんばってます。その核になっているのが、 [3]の「マス・カスタム化
製造システム」が置いてある。。。

 8C) ショールーム
 
これを久米さんは「5つの手法」で活用しました。

  -1) ふと来店した個人客に、ここでオリジナルTシャツを自作して
    らう(即席工房
    
  -2) ときにはここで「オリジナルTシャツ制作講座」をやる(教室
  
  -3) Tシャツ絵柄部分に優れたデザインを作ってくれた、懇意のアー
    ティストに、1〜2週間無料で貸し、個展を開いてもらう(展示
    スペース
    
  -4) 重要な法人顧客を招いて、「こうして迅速に試作品を作れます
    から、これからは現物を見ながら商品企画をなさってください」
    と訴える(デモセンター
    
  -5) 同様に取材マスコミ関係者への取材センターとして使う
  
 かくして久米さんは「IMCの精神」を「サイバー×7+リアル×5
の「両方」で発揮しました。これを「デュアルIMC」とでも呼んでお
きましょう。そこでは「7+5=12個」の手法が複合的に一体運用さ
れています。

 すごいですね。「12個」ですよ。これはもう「教科書を地で行く模
範例」です。

 ためしに皆さん、ご自分の会社で、何個の手法が使われてるか、ます、
その「数」を数えてみてください。この「数」こそが、電脳マーケティ
ングにおける必須の「管理項目」だと思います。


[9]  CSF(20) 起承転結のモデル化能力  (後方コンピテンシー)

 では以上[6][7][8]のマーコム戦略が導いた成功を、やや乱暴に整理
してみましょう。

  ・起: サイバー口コミとコマケ[6]プレスカバレッジ[7]
      7手法にまたがるサイバーIMC[8A,8B]
      
  ・承: それに接した人たちがホームページにやってくる。すかさ
      ずそこでは「特異な個人」を目立たせる[2]
      
  ・転: それを題材にショールーム8C)で重要法人顧客へ提案
  
  ・結: 短納期・小ロット製造能力[3]で注文ゲット→「起」へ

 要するにホームページだけでは商売は「回らない」のは当然で、次の
2つが必要です。

  ・これら起承転結のサイクルをフルに構想すること
  
  ・その上で、どのステップをどの手段に担当させるか、その役割
   分担を、サイバー世界とリアル世界の「両方」にまたがって設
   計すること

 前号の小仲酒店は、ほぼメールとホームページだけで、この全サイク
ルを立派に回しました。久米さんの会社は、デモセンターや電子広告も
使いました。パターンは異なりますが、いずれも、この「起承転結と
役割分担」は明確でした。

 (なお、この「起承転結と役割分担」は「ビジネスモデル」を考える
  上で、不可欠です)


[10]  CSF(21)  「勤勉で合理的な職業人」(後方コンピテンシー)

 では何故、お二方は成功できたのか。それは(1)〜(20)のCSFが理
由ですよ、という話を、いままで延々としてきました。

 しかし何故、そもそもお二方は20個ものCSFを体得できたのか。

 その根本的な理由は、お二方がとくに「勤勉で合理的な職業人」だっ
たからだ、と私は思います。

 第一に「勤勉」。お二人は、他の人が見ていようがいまいが、長時間、
働きます。しかも、その様子をできるだけ他の人には見せないよう、お
気楽ムードを表に出すのを、忘れません。

 第二に「合理精神」。これは上記20個のCSFから、もはや自明で
すね。高度成長期じゃあるまいし、感情だけでフラフラ動く人は、必ず
失敗します。旧日本軍や、巨人の長島監督と、同じこと。

 ちなみにお二方は、合理精神だけでなく、美意識にも優れていますが、
これはやや意外に思えて、そうではない。数学の公式は美しいですし、
超一流のプログラマーが超一流の演奏家を兼ねてる例も、たくさんあり
ます。

 第三に「職業人」。お二方には、いわば「天命 Beruf 」と言えるく
らい強烈な職業意識があります。小仲氏については前号の通りとして、
Tシャツにかける久米さんの情熱も、並ではありません。

  http://www.t-galaxy.com/menu/company/message.htm
  http://www.t-galaxy.com/saka/sa97051.htm
  http://www.t-galaxy.com/menu/bigbang/bb01.htm

 お気づきのように「勤勉で合理的な職業人」という「人間類型」は、
マックス・ウエーバーが明らかにしたように、産業社会の担い手でした。

 産業社会が到来するには、蒸気機関の発明だけでは不充分で、「新し
い人間類型」が必要でした。当然、そのために「古いタイプの人間」を「
改造」する必要も、ありました。

 情報化社会の到来に当たっても、同じこと。インターネットだけでは
不充分で、「新しい人間類型」が必要です。現にいま、米『ワイアード』
97年12月号などは「デジタル・シチズン」を云々しはじめました。


[11]  CSF(22) ドリームとオープン   (後方コンピテンシー)

 とはいえ、そろそろ21世紀の今日、今さら「勤勉で合理的な職業人」
に「なれ」と言われたところで、なれる人は、少ないでしょうね。

 この「勤勉で合理的な職業人」モデルは、それこそウエーバーが説い
たように、根っからのプロテスタントでなければ、長続きしません。長
続きしないからこそ、川島なおみのようなカンニング女に人気が出たり
するわけです。

 したがって、この古い人間モデル自体、改造が必要です。
 
 私の改造案は、「ドリーム」「オープン」「学習」の3要素を、この
古いモデルに加えること。これで少しは口当たりも良くなるはずです。
それにこの3要素は、インターネット文化とも合っています。

 このうち「ドリーム」についてはすでに[4]の通りとして、以下では
久米さんを例に、「オープン」「学習」の2点を、見ていきましょう。


[12]  CSF(23) どん欲な学習能力    (後方コンピテンシー)

 あらためて久米さんサイトを、見てみます。
 
  ・財務数値は、すべて連結ベースで見せてます。気持ちいいですね。
   http://www.t-galaxy.com/menu/company/renketsu.htm
   
  ・自分の「不得意なこと」も明言しています。
   http://www.t-galaxy.com/menu/company/od01.htm
   
  ・トップページにはコンテンツが何ページあるかという「数字」が
   ありますから、どのくらいの実力か、一瞬で分かります。
   http://www.t-galaxy.com/index.htm

 どこまでもオープンですね。自己開示ができてますから、安心して読
めます。逆の場合は、すべてを疑わないといけなくなりますから、読む
のにホネが折れますが、久米さんサイトは大丈夫です。

 また同氏のオープン精神は、上記[8]の8B-1)の同報メール「縁尋奇妙」
にも、顕著です。

 これは前記のように、もともと数年前、BPRを始めたとき「社内」の
幹部に流し始めた「経営日誌」が原型でしたが、だんだん「社外」の人た
ちにも流すようになりました。講演先や学会で知り合った人、取材に来た
マスコミ関係者など、その宛先は今、300超です。

 これを同氏は毎日、流しています。それも業種・職種・年齢・価値観
において極めて多様な、かつ高能力・高意欲な人に流しています。

 当然、間違ったことを書けば「恥」もかきます。でも同氏は気にしま
せん。恥をかくマイナスより、新しいことが学べるプラスを選びます。
そもそも経営者なんですから、「恥」だの「自尊心」だの「プライド」
より、「実利的なプラス」を重んじるのは、当然です。

 たとえば昨年4月、久米さんは、日産自動車の著名サイト「羅針盤」
のウエッブマスターの永山さんから、ある企画をメールで教えてもらい
ました。それは、

  ・富士スピードウエイで撮影した写真を100枚、CDに入れ、
  
  ・「羅針盤」来訪者の一万人にそれをプレゼントし、さらに
  
  ・「このCDの画像で、皆さん、ご自分のホームページを作ってく
   ださい、出来映えを競うグランプリもやりますよ」と告知する、
   
という企画でした。

 この永山さんの企画、いいですね。「乗数効果」があるでしょう? 
こうしたアイデアを学べるからこそ、久米さんは毎日、せっせと経営日
誌を社外の300人に書き送っているわけです。


[13]  CSF(21) でもやっぱり。。。    (後方コンピテンシー)

  しかし「ドリームでオープンで、学習意欲があって」という美しい話
だけでは、ビジネスはできません。やっぱり基底には「勤勉で合理的な
職業人」モデルが必要です。
 
 その意味で、久米さんには、お父様が、素晴らしい原体験を授けてく
れました。会社勤めをやめて、実家の会社に入った頃、倒産したお客さ
んの債権者会議に、当時社長のお父様から「行ってこい!」と命じられ
たのです。

 債権者会議。勉強になったでしょうね。この経験から久米さんは、本
気でリスク管理を考えるようになりました。
 
 第一に、顧客ベースの拡大。 特定のお客さんに1割以上は依存しな
いよう、広く浅く顧客を増やしました。

 それには当然、強固な合理精神が要りました。製品自体の品質・納期・
価格はもとより、FAX受注と現金取引で、プロセスの速度・コストも
改善しました。

 第二に、リアルタイムな与信管理。まずニフティ・サーブの帝国デー
タバンクの企業情報を、数ヶ月間、じっと見て、なるほど、こいつの評
点は、実際の倒産企業と相関があるな、と判断。これをベースに、与信
枠や支払条件を決めることにしました。

 さらにLANベースのオンライン・システムで、その情報を常時共有。
受注時点で担当者が、販売可能額を、顧客別かつリアルタイムに見れる
ようにしました。

 おかげで、貸し倒れ額は急減。96年と97年は、連結ベースでゼロ
になったそうです。

 要するに景気が良くても悪くても、信用リスクは「自分で減らす」。
そのためには、2世紀前の「勤勉で合理的な職業人」の精神が、やはり
必要でした。

『ECスクエア通信』フッター

[最後に] ご一読ありがとうございました。本号はいかがでしたでしょうか?

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