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Nov.10, NEC サイトで論説発表         
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皆さん、こんにちは。初めての方、はじめまして。

 発行人の太田です。

  さて前号では、山一ショックに寄せ。。。

 ・今や「ナレッジ」こそが企業の「稀少性」の源であり、ナレッジ
  こそが、利益を生み、他者からの模倣を防ぎ、会社の存続を可能
  にする

との認識下、ナレッジ・マネジメントにつき、次のうち(1)(2)(5)を論
じました。

  (1) それの大ざっぱな「定義」
  (2) しれが必要となった「背景」
  (3) それが実現しようとしている「中身」
  (4) それが必要とする「技術」
  (5) それを行った「結果」

 本号では主に(3)、次号では主に(4)の話をします。


[1] ナレッジ・マネジメントの柱は「PPTC」。最重要なのは何?

では、ナレッジ・マネジメントの「中身」とは何か。本年11月の「
Business Process & Workflow Conference」の基調講演者で、斯界
最大のキーマン、トマス・ダベンポート氏によれば、その「中身」は、
ほぼ次のとおりです。

 「ナレッジ・マネジメントとは、

   ・企業の「稀少性」を高めるようなナレッジを

   ・ナレッジ・ワーカーらが

   ・強力なテクノロジーの助けを借りながら

   ・発掘・再利用・分配するプロセス

  を高速化することである」

 つまり同氏いわく、ナレッジ・マネジメントの柱は4つある。

  ・People    : スキルある社員、また彼らを吸着する制度・文化

  ・Process   : 彼らがスキルを発掘・加工・配布するプロセス

  ・Technology: そのプロセスを助ける情報技術

  ・Contents  : その結果、蓄積・再利用されるノウハウの宝庫

 では、この「PPTC」のうち、最重要なのは何か。

 答えは本便末尾[6]に書きますが、その前に、本件にまつわる主な関
連所説を、ひととおり見ておきましょう。


[2] 「真の暗黙知」は「具体性・緊迫感」漂う「公開問答」で発掘を

 まず衆知のように、野中郁次郎・北陸先端大学教授は、7年ほど前か
ら、大略、こう論じておられます。

  ・一般にナレッジには「文書化されざる暗黙知」「文書化された形
   式知」の2種類がある

  ・両者の交流により、新しい知を創造せよ

  ・米国企業は形式知の扱いが得意、日本企業は暗黙知の扱いが得意

 この野中説の貢献は、暗黙知の重要性に光を当て、「知」の文書化は
それほど易しくないよ、ということを示した点です。

 なるほど、約10年前に流行した「エキスパート・システム」でも、
知の文書化には、多くの人が失敗しました。ナレッジ・エンジニアと称
する人たちが現場のエキスパートにインタビューし、彼らの暗黙知(判
断ルール群など)を定式化し、それをソフトに埋め込もうとしましたが、
その試みの多くは、確かに失敗しました。

 では何故、失敗したのか。私は、2つの理由があったと思います。

 ・「分量」の問題。エキスパートたちの頭にあるナレッジは、信じ難
  く膨大で、その「全て」を文書化するなんて、そもそも無理だった。

 ・「緊迫感」の問題。エキスパートたちだって、情感面では、普通の
  人です。ある晴れた午後、コンピュータ会社からナレッジ・エンジ
  ニアがやってきて、会議室でお茶でもノンビリ飲みながらインタビ
  ューされたって、肝心の知識は、出てきません。

 したがって必要なのは「具体性と緊迫感」の2つです。逆に言えば、
この2つがあれば、明示化できる暗黙知も、多いのではないか。

 たとえば、社内のどこかで、とある素人社員が何か「具体的な問題」
に直面し、すごく困っていて、お客さんも社長も激怒している! とい
う場面を考えてみましょう。俗に言う「修羅場」です。

 そんなときこそ、暗黙知発掘の大チャンス。その素人社員は、エキス
パートの面々に、解決志向型の質問をする。そして彼らどうし、公の場
で討議してもらう。それも短時間に結論を出すよう、お願いする。

 こんな「公開問答」プロセスなら、暗黙知もかなり明示化できるし、
しかも切迫した問題解決に必要なエッセンス部分が明示化できて、たい
へん効果的である、と私は経験上、思います。

 そして、こんな「公開問答」こそ、グループウエアに最適な用途であ
る、とやはり経験上、思います。もちろん条件は、いくつかあります。

 (1)グループウエアに投じられた質問文に、「具体性と緊迫感」が
   みなぎっていること(課題意識の共有、感情の共有)

 (2)当然ながら、社内にナレッジ・ワーカーが存在すること

 (3)彼らのミッションが「問題解決だ」と誰もが信じていること。
   もちろん彼ら自身もそう信じていること(これも感情の共有)。

 (4)彼らが、話すのと同じスピードで、グループウエアへ書き込める
   こと。それには、

   ・精神集中に適した静かな環境
   ・タッチタイピング能力+高性能なカナ漢変換ソフト
   ・あるいは音声認識ソフト

 これらの条件が満たされていれば、グループウエア上の問答は活発と
なり、参加者も増えますから、「活発度×人数」の乗算で、ナレッジ発
掘は進みます。

 そして野中郁次朗さんの言われる「知識創造」とは、まさしくこの「
かけ算」が起きたときの状態のことなのではないでしょうか。

 ともあれ、暗黙知は本来、確かに明示化・文書化しにくいのですが、
それは「事前に・全てを・インタビューで」やろうとする方法が無力な
だけなのであって、グループウエアを使い、かつ上記(1)以下の3条件が
揃えば、かなり電子文書化できると私は思います。この点に関しては、野
中説には、やや拡張的修正が必要とも思います。


[3]「エセ暗黙知」は明示化せよ

 ただし上記の「公開問答」が必要なのは、「真の」暗黙知を発掘する
ときであり、「エセ」暗黙知の場合は、話が違います。

 たとえば洋菓子大手のブルーミッシュの吉田菊二郎社長が昔、フラン
スで修行したときの話ですが。。。

  ・日本では「卵を何個使うかといった基本」すら「秘密」なのに、

  ・フランスでは「初日に渡された原料表にすべての”秘密”が記さ
   れていた」そうです。

 こんな「秘密」は、どんどん文書化すべきですね。文書化「できない」
のではなく「してない」だけなんですから。

 また吉田社長は、こうも言われます。フランスの職人道では

  ・身につけた知識は、自分だけで独占するのではなく、後に続く多
   くの人のために使ってこそ生きる

  ・職人とは、モノづくりのプロであると同時に、自らが得た知識や
   技術を教える教育者であり、その世界のすばらしさを伝えるスポ
   ークスマンである(『日経流通新聞』97年12月2日)

 なぜフランスの洋菓子がこんなに国際競争力があるのか。その秘密が、
ここにあります。教育者やスポークスマンがいるからです。

 ともあれ、吉田社長のお話から考えますと、野中説で言う暗黙知には、
ほんとうに文書化しにくい「真の暗黙知」と、つまらない理由で文書化
されてないだけの「エセ暗黙知」と、の2タイプがあるのではないか、
その点でやはり野中説には、やや修正が必要である、と思います。


[4] 知識創造とは「既存の要素の組み替え」である

 ではもう一段、ナレッジ・ワーカーらの脳みそ中に、踏み込んでみま
しょう。。。そこでは何が起きているか。答えは「創造」です。まさに
野中さんの言われる「知識創造」です。

 しかし「創造」といっても、「無から有を生む」ケースより、「有か
ら有を生む」ケースの方が多いんだそうです。とくに「既存の要素の組
み替え」であるケースが多いんだそうです。

 これは、「創造力の権化」たるスティーブ・ジョッブス氏も言ってま
すし、ボストンコンサルティンググループの堀紘一社長も言ってますか
ら、きっと本当なんでしょう。


[5] 直観とは「膨大な情報」を操作する体験から生まれる

 またナレッジ・ワーカーは「直観」にも優れています。

 そして、この直観説は、それなりに正しいようです。人間の思考過程
には、帰納と演繹だけでなく、類推 analogy や拐想 abduction のよう
な動作もあり、これらは、帰納や演繹よりケタ違いに速く答えが出せる
という点で、いわゆる直観に近い動作です。

 しかもこのうち「類推」については、いまコンピュータ科学でも、そ
のメカニズムの解明に、懸命な努力が続いています。別に神秘でも超人
技でも何でもなく、合理的に解明可能なプロセスなのです。

 しかし、この「直観」もまた、前項の「知識創造」と同じく、「無」
からは生まれない。

 確かに、超優秀なナレッジ・ワーカーは、イザというとき、一瞬で答
えを出します。しかし彼らは平素、何をしているのか。彼らはふだん、
信じ難く膨大な情報に接し、それを真剣に運用しています。だからこそ、
直観が育つわけです。要は、秀才だけが天才になれるのです。
 
 これは8年くらい前、スタンフォードのキャサリーン・アイゼンハル
ト助教授(当時)が実証研究で得た結論です。しかも同助教授は、この
研究で3つも賞をもらってるそうですから、信用しましょう。


[6]  結論: だからナレッジ・マネジメントで最重要なのは。。。

 では以上の議論を要約します。

  ・ほんとうに文書化「しにくい」真の暗黙知も、グループウエアに
   より条件付きで文書化できる部分は、やはり文書化すべき[2]

  ・文書化「できない」のではなく「してないだけ」のエセ暗黙知は、
   即、文書化すべき[3]

  ・いわゆる「創造」や「直観」も、既存の知識が元になる[4][5]

 要するに「文書化された既存の知識」が重要なわけです。
 
 ということで[1]で出した問いに戻りましょう。ナレッジ・マネジメ
ントで最も重要なのは何でしょうか。私は「既存コンテント」だと思い
ます。

 ダベンポート氏は「People が最重要だ」と明言しておられましたが、
しかしその実、同氏も、第4項の「Content」に、最も多くの説明時間
を割いておられました。

 では、その「Content」を使いよくするには、何が重要なのか。同氏
の答えは、2つあります。

  ・シソーラス (類義語・関連語辞典)

  ・タクソノミー(用語集・分類基準)
 
 そして実は、この答えには、実に重要な真理と、重要な間違いが、両
方含まれています。それらは何でしょうか。。。当件は、次号で論ずる
ことにしましょう。

 その際、サブテキストとして下記を使います。できるだけ入手してお
いてください。とくに(b)は、たいへん簡便かつ優れたペーパーです。

  (a) 道本健二「ジャストの命運を握る新検索技術の実力を見る」
    『日経バイト』97年12月号(最新号)、p232以下
  (b) 星野友彦「類似文書を探り当てる新ソフトが登場」
    『日経コンピュータ』97年12月8日号(最新号)、p154以下
  (c) http://www.justsystem.co.jp/cb/

 詳細は次号に譲りますが、これらのペーパーを読めば、

     「頭脳」を駆動するのは「言語」である   

という当件の本質を、逆推できると思います。

 では今回も、弊紙をここまでお読みくださり、ありがとうございまし
た。次号「No.9」は、12月18日頃に配信いたします。
 

。。。ということで本論は以上で終わり、以下、恒例の近況報告です。


[後記1] 弊レターの用語集ページが、あのECOMと相互リンク。深謝。

  弊レターでは所々、分かりにくい語句などに注を付け、用語集ページに飛
ぶ仕掛けを作っています。

  http://www.CIO-cyber.com/pj/ec2/yogo.html

 そして去る12月5日、このページが、あのECOMさんの用語集ペ
ージと相互リンクすることになりました。

  http://www.ecom.or.jp/ecom_today/no.1/yohgo.htm

 ご存知の通り、ECOM=電子商取引実証推進協議会は、通産省の肝
いり。おそらく日本最大のEコマース国家プロジェクトです。

 その公式サイトから相互リンクしてもらっている個人のホームページ
は、今のところ唯一、私のサイトだけ。正直な話、たいへん光栄です。
おかげで読者数も、増えました。

 ECOMの山下亮さん、加瀬幸江さん、ありがとうございました。

 また3ヶ月前、用語集ページを作るよう私に提案してださった、久米
繊維工業の久米信行社長、また、そのページへ改善要望を出してくださ
った、外務省の松永一義課長補佐、サイベース社の下平学さん、ありが
とうございました。


[後記2] 弊ページに「私の講演写真」を載せました(請う、ご高覧)

 私は平素、通販サイト・オーナー数百人が集うメーリング・リストで、
よく発言していますが、そこでは度々、こんな提言を目にします。

  「顔の見える、人の気配のする通販サイトにしましょう」

 実は、私もその提言者の一人だったりするわけですが、このたび私も、
人に提言するだけでなく、それを自分で実行することにしました。

 先月、IBM社主催のノーツ・エキスポで話をしたときの写真です。

  http://www.CIO-cyber.com/pj/pf/shashin.html

 撮影は、ホンダなどの広報ページを手がけたネオックス社。講演の模
様をデジタル・ビデオに撮ってもらい、そこから静止画を抽出してもら
いました。

 写り具合は、いかがでしょうか。「そういや、しばらく太田の顔も見とらん
な」と言う方は、ご高覧くださいませ。
 


[後記3] 12月号の『流通設計』ではウエッブEDIを紹介

 米国でいま大ブレイク中のウエッブEDI。これは実に仕組みが簡単
で、中小企業に、どんどん広がるでしょう。

 その仕組みは、たとえば消費者が通販サイトで「お買い物」をすると
きと、ほぼ同じです。

 消費者は、画面を見ながら「よし! これを買おう!」と思ったら、
あとは「数量」や「希望納期」を入れ、自分の「住所・氏名・電話番号」
を入れるだけで、品物を「発注」できますね。

 これと同じ原理をEDIの世界に持ち込んだのが、ウエッブEDIで
す。これを使えば、CIIやEDIFACTなど、難しいEDI標準の
ことは、知らなくても大丈夫。すごくカンタンです。

 これで中小企業にもEDIを広げる準備が整いました。米国ではこれ
で、EDIの普及率が36倍!にもなるだろう、と言っている人もいま
す。すごいですね。

  12月号の『流通設計』では、このウエッブEDIを効果的に導入す
るための「5段階発達図式」を、ご紹介しています。
 

『ECスクエア通信』フッター

[最後に] ご一読ありがとうございました。本号はいかがでしたでしょうか?

当ニューズレターは、 国内きっての専門家が KM/CRM を、次の「カテゴリ体系」で 論ずるもの。関心に合いそうなトピックを、 適当にクリックしてみてください。

トピックス一覧(テーマ別目次):MyPRG_Called_EC2_Topics.html
(0) 入門
全体図, 定義 ( ナレッジ", KM, CRM), サマリー( KM, CRM )
効果実測例 ( KM, CRM), なぜ有効か( KM, CRM
(1) 戦略
今後にご期待ください。それまでは こちらを(11/07 改訂!)
(2) 知識プロセス & テクノロジー (3) ピープル & テクノロジー (4) 業務プロセス & テクノロジー
Marketing ( 3 事例で学ぶ 33 の法則, CFAR/CPFR),
Sales & Logistics ( PRM, JIT 設計販売, WebEDI)
Service
(5) プロジェクト (N) 番外編: 重要イベント

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