[4] BPRでも「関数的思考」が大切。分割的思考ではダメ
「売上」なる変数を増やすには、どんな政策変数を増減させればいい
か、それを考えることです。つまり
(3B) どんな政策変数=独立変数を変えたいのかを選ぶ
この例では、「顧客要望への対応速度」「サービス水準」「価格」な
ど、非財務的な数値目標が「政策変数」になるはずです。
実は、このステップがBPRの成否を分かちます。何故か。
一般に、経営計画を立てるときには、次の3タイプの変数を立てるこ
とが有効だと思われますが。。。
1)「環境変数=独立変数」(予測はできるが制御できない)
2)「目標変数=従属変数」(目標にはなるが制御できない)
3)「政策変数=独立変数」(直接に制御できる)
その要諦は、
・「環境変数の動きを予測」しながら
・「政策変数を制御」することにより、
・「目標変数を改善」することだ
と思います。
つまり最重要なのは「制御すべき政策変数」になります。確かに、「
環境変数」も結果=目標変数を左右しますが、環境変数は、自力で制御
できませんから「制御できる独立変数」たる「政策変数」が、最重要に
なるわけです。
注)やや枠組みが異なりますが、伏見多美雄『経営の戦略管理会計』
中央経済社、第5、6章も参照ください
以上は経営計画の要諦ですが、BPR戦略立案でも同じこと。重要な
のは「正しい政策変数を選ぶこと」です。
しかし往々にしてわれわれは、この「1)3)-->2)」なる関数関係を忘
れ、「2)を単に分割して満足してしまう」という誤りを犯しがちです。
・売上目標を、部門Aにはいくつ、同Bにはいくつ、と「分割」し、
これで何やら「計画を立てた」気になる。
・前期の数字が行かなかったとき、「部門Aがいくつ、同Bがいくつ
足りませんでした」と説明し、これで何やら「分析した」気になる。
もちろん、こんなのは「分析」ではなく、単なる「分割」です。
よくご覧ください。両例とも「正しい政策変数を選ぶ」作業は、一切、
行われていません。ここに最大の誤りが潜んでいる。われわれが「分割
的思考様式」に囚われている限り、この誤りを防ぐのは、たいへん難し
いと思います。
こうした「分割的思考」を廃し、われわれは「関数的思考」を採るこ
とで、「どの変数を、どの変数が動かしているのか」という関数的な因
果フローを描き、よってもって「正しい政策変数を選ぶ」べきです。そ
れがソコル氏の勧める第二ステップです(3B)。
その点で良い例は、次のような会社です。
・ボーイングは「開発期間」という政策変数を選び、これを「半年」
にする、という数値目標を立てました。
http://www.CIO-cyber.com/pj/ec2/Back/n001.html
・川田工業やNECも「設計時間」という政策変数を選び、これを「
1/5」にする、という数値目標を立てました。
『日経産業新聞』97年8月8日号、97年10月28日号
・フェデックスも「納期」という政策変数を選び、これを「翌朝10時
までに荷物を届ける」という企業ビジョンにまで、昇格させました。
では何故、これらの例が良いのか。フェデックスの例で説明しますと、
あの「翌朝10時」というシンプルな「数値目標」を、朝から晩まで、何度も
何度も、すべての社員各人が口にすれば、多くの因習を、検証のフル
イにかけられるからです。
「君のこの行動は、荷物を翌朝10時に届けるのにプラスなのか」
「この制度は、荷物を翌朝10時に届けるのにプラスなのか」
[5] ] BPRでは「改造すべきプロセス」を選び間違えないこと
こうした「関数的思考」をとれば、われわれは「売上増」なる財務的
な目標変数から、「顧客要望への対応速度」「サービス水準」「価格」
など、非財務的な政策変数へ降りてこれます。
そこで初めて「なるほど、では改造すべきプロセスは、セールスとロ
ジスティクスだね」となって、めでたく「BPRすべきプロセス」が正
しく決まります(3C)。
このようにソコル氏の「5つのステップ」では「BPRすべきプロセ
スの選定」という作業が、3番目に来ます。
(3A) 変えたい目標変数=従属変数を選ぶ
(3B) どんな政策変数=独立変数を変えたいのかを選ぶ
(3C) 変えるべきビジネス・プロセスを選ぶ
この順番はソコル方式の特徴で、たとえばBPR第一世代の代表論客
たるトマス・ダベンポート(『プロセス・イノベーション』日経BP)
では、この「プロセス選定」のステップ(3C)が、冒頭に来ていました。
おそらくソコル式の方が良いはずです。米国でも「間違ったプロセス
をBPR対象に選んでしまった」ことがBPR失敗の一因視されていま
すが、こうした失敗は、ソコル式の方が起きにくい。BPRすべきプロ
セスを選ぶ「前」に、(3A)(3B)のような準備作業をしているからです。
米国企業も過去の経験から学び、成長したようですね。
というわけで以上、本号では、BPRの一般手順、
(1) 危機感を育てよ
(2) 最強の推進チームを形成せよ
(3) 効果直結型の戦略を立て、
(4) それを効果的に伝えよ
(5) 人々をエンパワーし、味方にせよ
(6) 短期で初期の成果を出し、数量化し、報いよ
(7) BPRを企業文化に根づかせよ
のうち、(3)に的を絞ってみました。次号では、(3)以外にも的を広げ、
(1)から(7)全般を論じてみたいと思います。
。。。ということで本論は以上で終わり、以下、恒例の近況報告です。
[後記1] 『流通設計』で連載を始めました
私は平素、アスキーの『netPC』と、ダイヤモンドの『セールス・マ
ネージャー』に連載を持っていますが、このたびDISAコンファレン
スの詳細を、輸送経済新聞社の『流通設計』に、8回連載で報じること
になりました(10月1日発売の10月号より)。
ちなみに同誌は、国内で唯一のロジスティクス専門誌であり、私とし
ても、連載させていただけることになり、たいへん光栄です。
一方、PDMコンファレンスにつきましては、工業調査会の『自動化
技術』で8月号から3回連載でお伝えしておりますが、その連載は10月
号で終わります。ご愛読、有り難うございました。