◆ 2001年9月:今こそ「真の打算」を米国のリーダーに求む
皆さん、こんにちは。太田です。
今月は、米国で数千人の人々が殺害される大規模テロが起こされ、9月17日現在、
それに対する米国の「広範かつ長期の報復行動」が始まろうとしています。
そこで今月は特別に、この「報復行動」につき私の所見を述べます。
最初に私の立場を明らかにしておくと、私は親米派です。個人的に(職業柄また経歴上)、
米国に日頃、大きな恩義を感じる1人です。
ですから、
- 今回のテロで、広い意味での我々の友人が、たくさん殺されてしまったことに、
私も呆然としています。また多くの米国国民の感じている悲しみを、少しでも自分が
感じ取りたいと思っています。
- 同時に私は、親米派の1人として、米国に「真の問題」解決につながる「真の打算」を求めたい
以下、後者の論点を敷衍します。
なぜ今回のテロが起きたのか。中東に戦火や復讐心があったことが根本問題ですね。
米国が今週にも取るかもしれない「報復」路線が、その戦火や復讐心を永久に
- 消せる確率、消せない確率
- むしろ拡大してしまう確率、そうならない確率
この4つの「数値」が「いくつ」になるかを、まだ我々は、定量的に知りませんし、
米政府や日米のマスコミも、明らかにしていません。
私が最も懸念するのは、次の3点です。
- 大きな権力を持った人間が、有能なCEOではなく、愚かで勇敢なカウボーイのように、
ものを考え、ものを動かしてしまうのではないか、
- 一部のテレビ局が、10年前のように、彼を「応援」し、Dramatize して
しまうのではないか、
- ふだんからドラマ番組ばかり見ているテレビ好きの日米国民たちが、
またも10年前のように、その Dramatization 手法に、
騙されてしまうのではないか
むしろ今こそ「真の打算」が必要だ、というのが私の所見です。
以下、もう少し詳しく論じます。
Key Question-1: 根本原因は何か?
ロンドン大学キングス・カレッジの Lawrence Freedman 先生が
英 Financial Times の "Personal View" 欄に寄稿したエッセイ
"Israel's false impressions" によれば、
- ここ1年のイスラエル国の外交方針の基底には、次のような考えがある
- ここ1年のパレスチナの外交方針の基底にも、次のような考えがある
- また、★のような考えをパレスチナが持っているはずだとイスラエルが
信じており、その信念もここ1年の【イスラエルの】決断指針になっている。
要は、長年周知の、武力対決重視の「世界観」が双方にあります。
さらに同先生によれば、パレスチナ側には「失望」もある。
- 上記の「寛大な譲歩」が、単なる見せかけであり(企業で言えば「やったフリ
のTQC」みたいなものですね)、具体性・実効性が非常に小さく、パレスチナの「失望」を
招いたこと
Key Question-2: その「報復路線」は、その根本原因を解決するのか?
そこで我々が問わねばならないのは、「根本問題が解決される確率」です。
つまり米国の報復路線が、以上の「戦火」「復讐心」「世界観」「失望」を
永久に、
- 消去ないし修正できる確率
- 消去も修正もできない確率
が、非常に重要です。この成功確率が低ければ、報復路線は、やっちゃいけませんよね。
そんなのは小学生でも、かつ実行前から、分かりきったことです。
ということで今こそ「その報復で本件の根本問題が解決される確率はいくつですか?」
「いくつですか?」「いくつですか?」と、何度も何度も何度も何度も、答えが出るまで、
彼らに問わねばなりません。彼らに「有能なCEO」のような決断をさせるために、です。
要は「確率を問う」という初歩的な習慣を発揮すべきなのです。
Key Question-3: ならば対案は何か? 短期策+長期策
私が米国の指導者なら「緊急避難措置」として、目先の復讐のために目先のアフガンを
攻めるのではなく、パレスチナとイスラエルの間に「大きな物理的なカベ」を作りに行きます。
アフガンは「根本問題の所在地」ではなく、その「結果の所在地」たるに過ぎません。
根本問題の所在地は「聖地」なんですから、ここに兵力を集中投下すべきです。
そのための軍事行動なら、大いに賛成です。これで「カベ」ができれば、目先の紛争も防げて、
交渉のための時間も稼げるかもしれません。
上記 Freedman 先生は、こうした「壁作り」路線を「不毛」と評しておられますが、それは
たぶん長期的な観点からのご意見でしょう。短期的には有効なはずです。
というのも同先生のエッセイによれば、つい先月、イスラエルとパレスチナの間では、
公的な合意声明を出すくらい、交渉が「最終合意」段階に肉薄していたのです。
だから緊急避難措置として「カベ」を作り、目先の紛争を防いで時間を作りだせば、その時間で、
先月まで行っていた交渉を再開・完結できるかもしれません。すでに「最終合意」段階まで肉薄
していたんですから、その成功確率は、高いはずです。
世のマスコミ諸君にも、軍事行動「一般」の「善悪」を論じるのではなく、
その「目的と効果」を「短期と長期」に分けて論じてもらいたいと思います。
私の回答は、上記の通り、短期的には「カベ作り」、長期的には「交渉」です。
(なお某新聞社主催の某MLで、さっそく本稿へのご指摘を頂戴しましたが、
「カベ作り」とはいっても、当然、それを「どこ」に作るのかという「線引き」が重要です。
ご指摘をくださいました(とくに身分を秘しますが)某氏のご投稿を参考にしますと、
その線引きの基準は、「94年合意」の時点に戻すのが、
最善とまではいかずともわりあい現実的だろう、少なくとも現状よりはマシだろう、
というのが私の所感です)
Key Question-4: ラーデンを、どうすべきか?
一方、ラーデンという男は、上記の交渉がよりによって最終合意「直前」という大事なときに、
本当にバカなことをやってくれました。よって彼は、厳しく処罰されねばなりません。
もともと指導者には「バカなことをする自由」はありません。
権力を誤用する権力者など、メスを誤用する外科医と同様、最低の存在です。
ラーデンは、正規の政治家ではありませんが、多くのフォロワーを抱えた人間ですから、
広義の権力者です。ならば彼には本来、バカなことをする権利はないし、
権力を上手に使いこなす義務があります。
したがって彼は今回、厳しく裁かれねばなりません。判決は、
懲役1億年とか死刑1万回くらいが適正でしょう。
結び: 真の政治家なら「真の打算」を追求すべき
ひるがえって他の指導者たちにも、彼と同様の間違いを犯さぬよう、求めたいと思います。
Financial Times の所見では、
- 米国の tough military action は、湾岸諸国からの支持を得られないであろう。
なぜなら後者の国内世論がそれを許さないから。
- 米国の sustained war against terrorism は、米国内の支持も得られないだろう。
なぜなら長期に生活や経済が苦しくなるから。
私も親米派の1人ですが、日本が「真の友人」ならば「真の打算」を米国の指導者に
求めるべきだと思います。ラーデンに最も欠けていたのが、これなんですから。
◆2001年8月: 楽観論や精神論を排し、体系的で論理的・実証的な具体論を
皆さん、こんにちは。太田です。
「CRM実践元年」と呼ばれた2001年も、はや8月。皆さんの
CRMプロジェクトは、快調でしょうか?
ご多分に漏れず当分野にも「悪い話」と「良い話」が両方あります。
ならば必要なのは、何でしょうか?
面白そうな楽観論や、有り難そうな精神論に、もはや未来などありません。そんなのは
確かに「心が安まる」だけで、昔も今も「敗戦への一本道」でした。
不況の時期は、なおさらそうです。力の限り撃退しましょう。
ということで必要なのは、トコトン地に足のついた、体系的で論理的で実証的な
具体論。ぜひ次の文書を、お使いください。
一方、「当社は、まだその段階ではない」とお感じの皆さまは、
次の文書やセミナーを活用され、各人、どうすれば会社が良く
なるのか、まずは自分で答えを考え、かつ周囲の方々と、
話し合ってみましょう。