|
ブランド人格とは、
「もし、このブランドが人間なら、
どんな人格をもっているだろうか?」ということ。
では何故、この概念が重要か? 人々が擬人化を好むからである。
彼らは一般に、その会社の社長や、CM タレントや、
その商品の顧客などをもとに、ブランドを擬人化したがる。
では何故、人々は擬人化を好むか。理由は2つ考えられる。
- 第1に、擬人化は「古代アニミズムの名残」であり、
人類史と共に古く、したがって思考習慣として根強いから、というもの。
実際、山や森や動物なども人間であるかのように考えてしまう習慣は、
古代アニミズムとともに始まったが、今なお、
「赤頭巾」「桃太郎」などの童話の中に、
根強く残っている。もちろん、これらの童話は、今日では
子供向けになっているし、
アニミズム(自然崇拝や動物崇拝も含む)も、
多神教→一神教→科学により滅びたはずであった。
しかしこの手の童話は、17世紀には、サロンの女性たちが
「大人向け」の座談のテーマとして執筆したのであり、
それが「子供向け」に変化したのは18〜19世紀なのである(注7)。
それから人類は高々、3世紀しか経過していない。
- 第2に、擬人化は「比喩の一種」であり、
これで人々は思考力を節約できるから、というもの。
未知のものを既知のもの(つまり人間)になぞらえれば、
比喩の力で、理解が早まる。彼らの脳は通常、
最小の努力で最大の処理件数を稼ぐため、厳密な推論を省き、
比喩という早道に頼る。
したがってモノゴトの擬人化が止むことはなく、
したがってブランドの擬人化も止まない。
おそらく第2の理由は完全に正しいし、
第1の理由も部分的には正しい。
したがって今後も、人間が人間であり続ける限り、良かれ悪しかれ、
ブランドの擬人化というアナロジーの習慣は、
止まないと思われる。
本件の基本文献は2つあり、そのうち[1]は学会論文、
[2]は一般向けである。
- [1] Jennifer Aaker(1995=1997),
'Dimensions of Brand Personality',
"Journal of Marketing Research" Vol.34 (Aug,1997)
- [2] David Aaker(1996),
"Building Strong Brand",
Chapter5, Free Press
[1]は、
1995年のワーキングペーパー段階で1996年に[2]で引用され、
かつ上記 JMR (1997年)など少なくとも2件の学会誌にも採択・掲載され、
以後、高人気な基本文献となった。
その[1]の特徴は、それまで単なる印象批評のレベルに留まっていた
ブランド人格の分野に、厳密な手法を持ち込んだところにある。
すなわち、
- 40個のブランド名群を用意し、かつその登場順序を回転させ
- 人間の人格を形容するような形容詞 114個を用意、
かつ登場順序をランダマイズして、
- 上記2者(ブランド vs 形容詞)の当てはまり度を
調査対象者に聞く。これら対象者は、いずれも非学生であり(重要)、
米国の母集団をよく代表するよう、性別・年齢別・地域別・人種別などで、
事前にランダムに層化抽出しておく。
- 設問方式は5段階評価。「非常によく当てはまる」「当てはまる」
などなど。
- その結果を、因子分析にかけ、バリマックス回転を通じ、
固有値が1以上の主要な5因子を直交解として抽出し、
各因子の比重(Explained Variance 説明率あるいは寄与率)も
定量化
- 変数と因子の間のある種の相関(Loadings 因子負荷量)を解釈し
(その解釈から曖昧さを減らすためにバリマックス回転を使ったわけだが)、
その5因子の意味を
「純心・興奮・能力・洗練・粗野」と判定
- かつ因子負荷量が 0.4 以下の形容詞数個を除いて、
一連の因子分析を再実行。各種の値を最終確定する。
統計の専門知識があれば、直交解より斜交解が良い等の改善意見もあるだろうが、
大局的には小さな問題であり、[1]のメソドロジーは、
今も評価に値する。
ただし、その手法を、
実務家たちが、日常業務の中で「速く・安く・間違いなく」使えるかは、
やや不明であり(調査票の郵送・回収の手間はインターネットで減らせても、
それ以外の手間がインターネットで減らせるかは疑わしい)、
その点、テキスト・マイニングを用いることで、
調査の厳密性を[1]並みに保ちつつ、
手軽さを大幅にアップできれば、素晴らしい。
その可能性を示した実証研究例としては、次があげられる。
[3]加藤雄一郎(2003)「さまざまなメディアを通じた消費者の銘柄意思決定メカニズム」『広告科学』2003年8月号
当研究については、弊連載でも近々、主題的に取りあげることに
なろう。お楽しみに!
|